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仕事が始まってから「勉強させていただきます」と言っているようでは、プロ失格である。
プロにとって勉強は、プロであり続けるための大前提である。
だからといって事前に徹底的に勉強したうえで本番に臨んだとしても、成果に結びつけられなかったとしたら、やはりプロとしては認めてもらえない。
勉強は、成果に結びつけるための勉強でなくてはいけない。
あくまでも目的は残す可」との勉強なのマある。
プロにとっての勉強の意味である。
私は先ほど、「コンサルタントは仕事が始まるまでに、その業界についての一定の知識を仕入れておかなくてはいけない」と述べた。
二疋の知識がないと、クライアントと同じ土俵で話すことができず、信頼を得られないからだ。
たとえばクライアントから、その会社の粗利率についての話が出てきたとする。
粗利率は業種によって大きく異なる。
建設業界の場合だと、スーパーゼネコンと呼ばれる大手でも、全社の決算レベルでの粗利率の平均はなんと六%未満と、かなり低い。
コンサルタントとしては、自分が担当している業界の粗利率の相場を頭に叩き込んでおかなくてはならない。
先方の担当者がでっちの会社の粗利率は、だいたい二五%なのですよね」と言ったときに、「それって高いのですか?低いのですか?」と尋ねているようでは、相手は鼻白んでしまう。
「相当厳しいですね」「競合企業の先方の担当者と同じ土俵で話せるように、必要な情報はすべてインプットしておく。
こうした事前の勉強が大切であるのは、コンサルタントの世界に限った話ではなく、営業マンだって同じだろう。
自分が担当している業界についての知識レベルが低い営業マンが、どんなに「ソリューシヨン営業」と称して謀題解決提案型の営業活動をかけたとしても、先方から相手にされるわけがない。
業界についての知識を仕入れておくことは、仕事をしていくうえでの大前提となる。
ただしコンサルタントや営業マンに求められるのは、「お客さんと同じ知識レベルになること」ではない。
彼らと同じ土俵に立ちながら、彼らの発想を超える提案、彼らの常識を打ち破る提案ができることが求められる。
概念・概要について知っていることは当たり前で、それ以上を相手は要求しているのである。
たとえば販管費(販売費及び一般管理費)の削減を課題としている企業があったとする。
その企業では、これまで社内でコストカットについてのさまざまな努力を重ねてきたが、なかなか効果を上げることができなかった。
そんなときこそコンサルタントの役割が必要とされる場面である。
自社では解決できないからこそ、トが呼ばれるのである。
コンサルタントの強みは、その業界の構造や会社の事情に精通しているだけでなく、同時に、他業界や他社の事例についてもよく知っているところにある。
そのためコンサルタントは、他業界や他社の事例を参照しながら、自分が担当している業界・企業にどのように適用できるかを吟味したうえで、販管費削減のためのソリユーシヨンを提案することができるわけだ。
片足は当該業界・企業に浸かりながら、もう片足は別の観点からその業界・企業を見ることができているから、顧客のニーズに合致しつつ、顧客の商習慣を超えた提案が可能になるのである。
つまり、ニーズを超えたウォンツ提案が可能になるし、ウォンツ提案ができてこそプロフェッショナルなのだ。
「なるほど!」「それ、いい案ですね!」「そういうのを待っていました!」と言ってもらえるような提案が必要なのだ。
クライアントが「業界の常識」に縛られているときに、その常識の壁を軽やかに飛び越える柔らかな発想力を持っていることも大切だ。
日本を代表する経営コンサルタントの大前研一氏には、こんなエピソードがある。
かつて大前氏が、ある大手写真用フィルムメーカーのコンサルティングに携わっていたときのことだ。
当時モノクロ写真のフィルムの枚数は、JーS(日本工業規格)の規定によって二O枚と三六枚に決まっていた。
カラー写真の枚数には規定はなかったが、モノクロに準じて、二一枚、二O枚、三六枚が常識とされていた。
一度常識が固まると、なかなかその常識から離れることができないのが業界人である一二枚と二O枚と一二六枚」と決めたら、そういうもる。
「カラーフィルムの枚数は、のだと思い込んでしまいがちだ。
ところが業界人ではない大前氏が、一万八000の写真を分析すると、二O枚撮りフィルムは最後まで使いきっているにもかかわらず、三六枚撮りフィルムでは一回の撮影で使いきっていないフィルムが多かった。
「二O枚では足りず、三六枚では多すぎる。
では、二O枚撮りのカラー写真のフィルムを、四枚増やして二四枚撮りにしたら、他社との差別化を図ることができ、消費者の要望にも応えられ、売れるじゃないかな」と思いつく。
実際に二四枚撮りフィルムを発売したところ、大きな反響を呼び、そのフィルムメーカーはシェアを伸ばしたというのである。
「二O枚を二四枚にしてみる」なんて、別にコンサルタントとしての専門知識がなくても、中学生でも思いつきそうな単純なアイデアではある。
大切なのは、だれでも思いつきそうなのだがなかなか思いつかないアイデアを、思いつく力である。
しかもその基本には、ファクトH事実があったのだ。
「これまでの思考の延長線上には答えはない」というときには、ゼロベースになって物事を考えてみる。
既存の常識への「とらわれ&しがらみ」から思考を解き放ってみる。
するとすごく単純なところから答えがやってくることがある。
コンサルタントは、こうした力についても、普段から鍛え続けておく必要がある。
勉強というと受験勉強のイメージが強い私たち日本人としては、「勉強川知識の詰め込み」ととらえがちだ。
たしかにクライアントと同じ土俵に立って話をするためには、「知識、しかもかなりの量を身につけるための勉強」が大切だ。
ただしここまで述べてきたように、ビジネスのプロにとって「その分野に関する一定の知識を持っている」というのは、当たり前の大前提であり、それだけではプロとして認められない。
顧客はプロに対して知識以上のものを求めている。
そこで重要になってくるのが、知識量を得る以上に認識力を高めるための訓練(勉強)を重ねていくことである。
認識力というのは、ある物事について、自分が獲得した知識や情報を元手にして、仏像を彫るようにその物事の本質を彫り出していく力のことである。
たとえばある住宅ジャーナリストが、「住宅業界の生き残り戦略」をテーマに本を書こうと考えたとする。
競争が厳しい住宅業界において、勝ち残っている企業の条件が、認識力である。
ジャーナリストは執筆にあたって、まずはこれまでに発行されているさまざまな文献に日を通すであろうし、積水ハウスや三井ホーム、レオパレス幻や大東建託、タマホームといった日本を代表する住宅会社や、近年注目を集めているデザイン重視の住宅会社などの有識者である担当者にインタビューをすることだろう。
そうして集まった情報は、まだこの段階では「この文献にこんなことが書いであった」とか、「あの人がこんなことを言っていた」といった知識や情報の寄せ集めに過ぎない。
このまま本にしても、「勝ち残っている企業の条件」を彫り出すことはできない。
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